北海道芸術文化アーカイヴセンター

HOKKAIDO ARTS AND CULTURE ARCHIVES CENTER

AtoCジャーナル 2023-09

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2023-09-30

 連日紙面を賑わしている「ラピダス」記事に微妙な違和感を覚えるのは私だけだろうか。30日朝刊の1面は「ラピダス電力60万キロワット」の大見出し、「道内需要の1〜2割」「安定調達 北電と協議」の見出しが踊った。要するに千歳に建設中の工場が稼働すると電気を食う。北電はそれに間に合わせるべく投資する、との趣旨だ。量産を開始すると、ラピダスは道内電力需要の大きな一画を担うことになる。これは北電の特上のお得意様が出現することに他ならない。
 北電にとっては、泊原発3号機の再稼働に追い風となる。60万キロワットといえば、1号機、2号機の定格出力に匹敵する。1〜3号機ともに東日本大震災を受けて停止・点検中で、現時点では再稼働の見通しが立っていない。ラピダス工場の稼働で電力が逼迫する可能性が出てきて、大義名分が立つと考えるのは、企業体としては当然のことかもしれない。しかし、である。
 違和感の正体は、半導体の「産めよ増やせよ」が「国策」であることではないか。経済産業省が2021年6月に公表した資料「半導体戦略」には「日の丸半導体」なる言葉まで明記されている。米・中・欧州・台湾・韓国が、いかに半導体製造に投資してきたかをこと挙げし、国内で半導体を生産する必要性を力説している(83ページ!もある饒舌な資料)。
 読者からは、国家政策に「従順」な北海道(や北電)が、経済産業省の敷いたレールに乗っかってウハウハしている記事に見えるのではないか。北海道の開拓の歴史、炭鉱の歴史と同じことが繰り返されないと、誰が証明してくれるのだろう。ちなみにラピダス側は再生エネルギーによる電力利用を優先したい意向とも書いてある。もちろんこれまでも、北大公共政策大学院教授の山崎幹根が7月29日の《教授陣のマンスリー講座》で、〈ある時代の国際環境や産業構造、政治的な背景の下で打ち出された国策は、いつか失効もしくは変容し、立地自治体は「自立」を迫られるかもしれない。降って湧いたような大型投資案件を持続的な発展につなげられるか。北海道のしたたかさが試される〉と釘を刺した。
 いわゆる記者ものの記事や識者の声でも、国策による工場誘致への警戒は表明されているが、1面記事のインパクトに比べ、いかにも弱い。「国策会社が電気くれと言ったから今日はうれしい再稼働記念日」紙面では、短歌にも悪ふざけにもなりゃしない。「国策ありがたり文化」ってのもあるんじゃないのかい。いつ言おうか、迷っていたが、ちょうど今日は道新夕刊の最終日。こうした文化の是非を「感じ」て、「論じ」ることを「楽し」むことも、立派な「カルチャー」じゃないのかと。
 その夕刊最終のカルチャー面は、「文化、芸能 夕刊で時代映す」の総括紙面。桜木紫乃が「夕刊マダムより愛を込めて」と、いつもながらの愛ある寄稿。《道内文学 創作・評論》の執筆を担当していた澤田展人が「深い考察 これからも必要」と、もっとなエールを送る。65年間続いたコラム《魚眼図》、猫の目のように一貫性を欠いた過去の紙面の移り変わり、映画評や90年代の見開き紙面などにも言及している。私自身が記者人生のうち20年ほどを費やしてきた紙面であることを思うと感慨はあるけれど、感傷はない。朝刊だけになる明日からも、文化は続くよいつまでも。
 朝日新聞朝刊社会面に、池澤夏樹早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞の記事。

2023-09-29

 道新朝刊《読者の声》に、釧路の「炉ばた」再開を喜ぶ投稿があった。職場が弟子屈だったころ、会社の先輩に連れていってもらった記憶があるなあ。昨年、市内の炉端焼き店が「釧路炉ばた学会」を組織した由。学問かどうかは別として、炉端文化として語ることには意義がある、と言いたい。
 社会面にはカルチャー誌『BRUTUS』と札幌の国内観光プロモーション実行委が連携し、期間限定のウェブマガジン「旅の目的は詰まっている 何度でも通いたい街、札幌』を発刊した。企画は悪くないのだろうけれど、タイトルはどうだろう。北大に「ワイン教育センター」なるものが開所したとの記事も。野生酵母による醸造技術や、ブドウ栽培に適した土壌などを研究していくそう。ワインに関する学位も設ける構想があるというから、本格的。ところで建物は1901年建設の国登録有形文化財「旧札幌農学校昆虫及養蚕学教室」をセンター棟に改装し、石造りの昆虫標本室はワインの貯蔵・展示施設にするというのだが、標本の行き場は? すでに総合博物館に移したのかしら。
 夕刊カルチャー面には、7〜9月の《季評・音楽》。ムジカ・アンティカ・サッポロの『コーヒー・カンタータ』や札幌・リトアニア文化交流コンサートが取り上げられている(評・三浦洋)。《展覧会》の画家大地康雄が85歳とは驚き。道立文学館では「アイヌ神謡集」刊行100年、知里幸恵の生誕120年を記念するイベントが開かれた(23日)。生誕120年といえば岩橋英遠と同い年だ。
 夕刊社会面では、札幌在住のそにしけんじによる4コマ漫画『ねこねこ日本史』を紹介。共同通信の長い記事。

2023-09-28

 道新朝刊に、夕刊廃止後は文化面を朝刊に週4面掲載するとの告知。火曜「論じる」木曜「感じる」金曜「楽しむ」土曜「文化・エンタメ」。火曜土曜は従来通りとすれば、木曜と金曜は新設となるようだ。アーサー・ビナード西條奈加のエッセイ、大型インタビュー、クリエイティブオフィスキューのコーナーも設けるという。面名はカルチャーを維持する模様。

2023-09-27

 道新朝刊社会面に「鹿追町 北海道石を守る」の記事。蛍光色を発する鹿追産「北海道石」を町教委が町指定文化財(町天然記念物)に指定した。文化財の名称は「然別火山群のオパール産地」。南ペトウトル山の南斜面にある。違法採取者が相次ぎ、罰則を伴う条例による保全の試み。
 朝日新聞朝刊教育面の「ボーン・クリエイティブ」の試みが面白い。作曲家藤倉大による作曲教室。現代音楽の奏法を子どもに紹介しつつ、自由に書いてもらう。「生まれながらの天才」に光を当てる取り組み。親の口出し厳禁というのもいい。
 道新夕刊は秒読み。カルチャー面には、テレビ局の秋改編の話題、《音楽会》はイ・ムジチ合奏団

2023-09-26

 滝川出身の日本画家岩橋英遠の記事は、道新朝刊文化面にも。NPO法人岩橋ふるさと北辰振興会(早弓弘行会長)が、閉校した江部乙中学校の元教員住宅を買い取り「岩橋英遠資料室」として、資料整理の活動をスタートさせた。昨年10月に、相模原市の岩橋アトリエから多数の資料を搬入。机、絵の具、描きかけの絵、戦前の美術雑誌など約5,000冊の書籍!、約1万点!と見られる写真・フィルム、その他。今後は資料の目録をデータベース化し、インターネットでの公開を目指す。北海道芸術文化アーカイヴセンターは、企画段階から岩橋英遠アーカイヴの活動と何らかの連携をしたいと申し出て、理解を得ていた。一歩先んじた着実な歩みに敬意と拍手を。
 道新夕刊カルチャー面は、道内の話題が豊富だ。映画監督の河瀬直美は「この夏、新十津川を訪ねて」の題で寄稿。大阪・関西万博(2025年開催)プロデューサーを務め、会場に建設するパビリオン「河瀬館」を、奈良県十津川村の旧折立中学校の資材を活用して建設するという。十津川と言えば、120年前の「山津波」で壊滅した村の人々が移住した先が新十津川町であることが知られている。河瀬監督が「ふたつの十津川」の関わりを取材するため新十津川を訪れたのは8月で、空知版にその記事を見つけたけれど、今回の寄稿だけでは趣旨がわかりにくい。ともあれ、この経験が「河瀬館」にどう反映されるか注目していきたい。
 陸別を舞台とするラジオドラマ『山神家の森』を、NHK札幌放送局が制作した。30日にFMシアターで全国放送する。北のシナリオ大賞の本年度受賞作。苫小牧出身の奥野瑛太が主役。脚本の宇部道路は千葉県出身。
 《音楽会》は札響第655回定期演奏会(9月9、10日)を中村隆夫が評した。首席指揮者バーメルトが取り上げたのはラヴェル、ファリャ、フランクとパリゆかりの作曲家たち。精緻な表現と趣味の良さを讃えつつ、フランクの交響曲では〈楽譜に込められた楽想を演奏者がどのようにくみ上げているかが見える演奏である。それが十分でなかったことを残念に思う〉と結んだ。
 北大出身の穂村弘によるエッセイ《やわらか眼鏡》は終了し、朝刊で《穂村弘の迷子手帳》として復活すると。長く続いた村田真の《ウエーブ美術》はこの日で終了。夕刊廃止に伴う朝刊シフト続々。

2023-09-25

 道新朝刊社会面には、藤沢市の元小学校教師ナトセンこと名取弘文が書いた演劇「わが名はシャクシャイン」が、東京・目黒の千本桜ホールで上演されたとの記事。30年ほどアイヌ民族と交流し、チカップ美恵子山本栄子らを授業に招いてきた成果の集大成として舞台化を考えた。〈和人が書いていいのか〉と葛藤もしたが、劇団仲間の協力で書き上げた。11月には原作本が刊行される。
 朝刊道央ワイド面。苫小牧市美術博物館で23日から、出光美術館の所蔵品を紹介する特別展「出光美術館近代美術名品展―四季が彩る美の世界」が開幕。出光興産北海道製油所の創業50周年と美術館会館10周年の記念事業で、陶芸や日本画、油彩など季節感のある作品を中心に展示している。展示替えをはさんで11月19日まで。小樽発祥の民謡「北海浜節」の歌唱を競う「第19回北海浜節全国大会」が小樽市民センター・マリンホールで24日に開催された。4年ぶり。
 夕刊カルチャー面では、札幌生まれのヴァイオリニスト山根一仁の紹介。10月26日、Kitaraでバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ3曲を一夜で演奏する。1995年生まれ。6歳まで札幌在住。
 朝日新聞朝刊社会面には、漫画コマ割り縦スクロールをめぐる法廷闘争の話題。『小悪魔教師サイコ』は原作者と漫画家が別人。当初コマ割り漫画として発表されたが、のちに原作管理会社が縦スクロールによるウェブトゥーンでも作品を発表した(別の漫画家が手がけたようだが言及なし)。最初に描いた漫画家は制作中止を望んだが「原作者を止める権利はない」と言われ、訴えたという。「コンテンツ」の扱いをめぐっての新たな権利問題であり、今後ますます増えていくだろう。

2023-09-24

 朝日新聞朝刊北海道版。札幌在住のドキュメンタリー映画監督影山あさ子が、アイヌ民族の「先住権」の取材の一環で、北米の先住民族のサケ漁を取材している。昨年10月から3回、米国やカナダを訪ねた。〈世界の先住権を見ることは、私たちの居場所を映す鏡になる。これから何をすべきか考える材料にしてほしい〉。全国で開く中間報告会の一環で、10月に音更、新ひだか、網走でも開催する。旭川でカムイコタンフェスティバル開催の記事も。
 同じ紙面で、北海道合唱コンクールでのエピソードが紹介されている。中学部門で審査結果を待つ間に、課題曲でもあるOfficial髭男dismの『Chessboard』を参加者一同で歌った。コロナ禍以前は自然発生的に歌われていたそうだが、今回は札幌市立あいの里東中の生徒が、そばにいた市立北陽中の生徒とともに声を上げた。合唱コンならではの風景。
 道新朝刊《記者の視点》で工藤雄高記者が、空き家状態で活用策が定まらない知事公邸の問題を論じている。知事公館道立近代美術館の建物の扱いも課題だが、まずは公邸について知事自身の考えが整理されなければ論議が進まないとの論調。道議会内の温度差が背景にあるようだ。記事の最後は、秋田県と秋田市による複合文化施設「あきた芸術劇場ミルハス」を例に、近美と札幌市が検討する「マンガミュージアム」を併設するなど〈大胆な発想があってもいいのでは〉と提言している。その是非はともかく〈北海道の新たな顔と言われるような場所を目指して知恵を絞ってほしい〉との主張には同意したい。
 《読書ナビ》に、アリストテレス『政治学』の新訳(光文社古典新訳文庫)を刊行した三浦洋・北海道情報大教授のインタビュー。『政治学』について、近代哲学の二つのスタイルである経験論と合理論のどちらにも偏らず〈自分が気づいた事実と論理を照らし合わせ確証していく過程に魅了される〉。

2023-09-23

 原発由来の高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題をテーマにした演劇『同郷同年2023』が、10月4〜9日に東京・杉並のザムザ阿佐谷で上演される。2016年に「日本の劇」戯曲賞を受けた作品のリメーク。処分場誘致を画策していた同学年の男性3人のうち1人が疑問を持ったことで、対立していく姿を描いた。道内でも最終処分地選定に向けた文献調査が進められており、脚本の劇作家くるみざわしんは「北海道の人にも見てほしい」。道新社会面。

2023-09-22

 道内の貨物列車の歴史を紹介する『北海道の貨物列車』が北海道新聞者から刊行される。著者は道新のOB原田伸一、写真映像部の伊丹恒。朝刊社会面の記事。
 道新夕刊カルチャー面では、滝川市江部乙出身で北海道を代表する日本画家・岩橋英遠の名作『道産子追憶之巻』(道立近代美術館所蔵、60.7×2908.8㎝)を大きく取り上げた(夏から冬にかけての部分)。長男岩橋敏文の「故郷でいつでも鑑賞」してほしいとの希望を受け、NPO法人岩橋ふるさと北辰振興会が大日本印刷に依頼し、高精細複製画として制作した。1億100万画素で「技法や色彩が忠実に再現されている」(河野敏昭学芸員)。滝川市美術自然史館で開催中の「生誕120年 岩橋英遠展」で観ることができる(10月15日まで)。夕刊の9月末休刊に向けたひと花。

2023-09-21 

2023-09-20

 沖縄出身で札幌で活躍した木版画家眞栄田義次(1952〜2017)の遺作展が、ギャラリーエッセ(札幌北区)で始まった。記事には抽象表現とあるが原発をテーマとした作品もあるそう。道新朝刊札幌版。
 道新夕刊カルチャー面には、この秋に離農して下川町から道外へ転出する俳人鈴木牛後が寄稿。俳句と出会った経緯などを綴っている。どこへ移り、何を始めようとしているのか興味が湧くが……。同じ紙面の《ステージ》は、東京芸術劇場プレイハウスでの「Dance for Life 2023」公演を取り上げた。札幌出身の振付家・ダンサーの篠原聖一によるリサイタル。〈ドラマチックだったり、緻密で抽象的だったり。篠原の引き出しの多さに感服する。こうした貴重な試みを彼の故郷で見る機会がないのは、正直残念ではあるのだが〉と結ぶ。

2023-09-19

 UHBが初めて映画を制作する。「新根室プロレス」代表のサムソン宮本を主役とするドキュメンタリー番組を再構成・追加取材した『無理しない ケガしない 明日も仕事!新根室プロレス物語』。宮本を長く追いかけてきた地元のカメラマン芦崎秀樹が密着取材した。ナレーションは安田顕。UHBの吉岡史幸プロデューサー(取締役)は「地方局がドキュメンタリーを制作しても、全国放送される機会は少ない。映画化は一地方の問題を全国に知ってもらう機会になる」と話す。年明けから東京、札幌で公開予定。道新朝刊文化面の記事。

2023-09-18

 道新朝刊社会面。昨年閉幕した映画祭を引き継いだ第1回「新・しんとく空想の森音楽祭」が17日に新得町で始まった。『タネは誰のもの』『荒野に希望の灯をともす』などを上映。江差町では第59回江差追分全国大会が開かれた。礼文町では、アイヌ民族が江戸時代にアワビを神の国に送り返す「貝送り」の儀式を行っていたとみられる遺構が見つかった。北大を中心とする調査団が「浜中2遺跡」で発見した。貝送りの儀式が行われていた記録や証拠の発見は初めてとのこと(「初めて」がアイヌ民族の、ということか、貝送りの痕跡そのものが、なのかわかりにくいが、道新以外の記事は見つからないので不明)。調査は8月上旬だった。
 道央圏版には、昨年亡くなった書家小川東洲の回顧展が深川で開かれているとの話題。道内の小川作品所有者に声をかけて展覧会を実現に導いたアートホール東洲館の渡辺貞之館長は〈作品を決めるのは7割の技量と3割の偶然。一度限りでしか表現できない墨の飛沫具合などを、本人は納得するまで書き続けた〉。30日まで。
 朝日新聞朝刊文化面の《片山杜秀の蛙鳴梟聴》があまりに見事な文章なので引く。冒頭は〈さみしい。しおれる。西村朗が逝った。坂本龍一も春に亡くなった〉。同時期に東京藝大で音楽を学んだ同志への追悼である。西村と坂本の音楽に共通するアジアへの志向が、民族音楽学者小泉文夫の世界観に育てられたものと見抜く。その上で、オーケストラの壮大な音響を追求した西村の音楽を〈アジア的へテロフォニー〉とし、映画監督で言えば黒澤明だと。対する坂本はピアノ一台で〈底にアジアの風の吹く旋律を淡々と連ねる〉小津安二郎の世界である。9月2日のサイトウ・キネン・オーケストラをジョン・ウィリアムズが振った演奏会に触れて、その〈確たる西洋的秩序〉に対して、〈東洋的かつ一元的な法悦のカオスを剛力で求めるか〉〈「方丈記」というか竹林の七賢というか非力や無力に希望を見いだすか。どちらかに逃れていくしかない〉。日本の作曲家の選び取るべき道を、そう喝破する。

2023-09-17

 朝日新聞朝刊道内面で、札幌市営地下鉄の謎の「チュンチュン」音の理由を調べて紹介している。面白い。札幌の地下鉄が国内で唯一、ゴム製のタイヤを使っていることは知られている。ゴム製ゆえに、架線から車体へ電気を取り込んでモーターを回し、さらに車輪、レールへ電気を送る過程で、金属製の車輪がない代わりに「負集電器」なるものが車両に取り付けられている。レールを挟んでいるため、レールのつなぎ目を通過したり、カーブのところで音がするとのこと。
 南北線が、札幌冬季五輪に間に合わせるため突貫工事で建設されたことは、以前調べた。中でも建設の責任者だった交通局長の大刀豊という名物男のエピソードは、ことごとく面白い。この記事でも、地下鉄がゴムタイヤになった理由を、交通局職員の言葉として「かつての交通局長が視察先であるパリのゴムタイヤ式地下鉄を見学して感動したというのも、理由として挙げられます」と記した。謎の「チュンチュン」音を導入に、成長期の札幌の歴史に目を向けさせる記事でもあった。

2023-09-16

 道新朝刊のサタデーどうしんで、道庁赤れんが庁舎の改修工事を取り上げている。1888(明治21)年に建てられた。屋根構造の不備や火災などで、1911(明治44)年に復旧、1968年に創建当時の姿に復元された。改修の眼目である耐震補強は、積まれたレンガの最上部から基礎まで直径5㎜の穴を開け、長さ約17mの鋼材を差し込む。これを引っ張った状態で固定すれば、レンガが動かなくなる。瓦は宮城県石巻市雄勝地区のスレート(石材)を創建以来、使ってきた。「見せる工事」の試みも。
 道新夕刊カルチャー面の《展覧会》。札幌の画家北山貫一が三笠・幌内炭鉱の往時の街並みを捉えた「ホロナイ鳥瞰」を大丸藤井セントラル・スカイホールで開いている(17日まで)。幌内地区の家々は消えてゆき「石炭が見つかる前の、森にかえりつつある」という作家の言葉は、春に札幌芸術の森美術館の「昨日の名残 明日の気配」展で中島洋が水道管や土とともに展示した、幌内地区の新旧の姿がオーバーラップする映像を想起した。これもまた森が帰ってくる姿だ。
 朝日新聞朝刊北海道面には、写真絵本『はるにれ』の作者で、自然写真家の柿崎一馬が豊頃町で講演する。1979年1月号の「こどものとも」で「はるにれ」のタイトルで出版した写真集が、累計21万部を超えるロングセラーになった。講演会は帯広の写真愛好家・浦島久が企画した。

2023-09-15

 道新朝刊の札幌市内版に、札幌市図書・情報館のリニューアルの概要が載った。本の入れ替えは最小限だが、分類を手直しする。ミーティング席はオンライン会議にも対応できるようにする。
 社会面には、先住民族ツーリズムの国際シンポジウム「先住民観光の挑戦」が北大で開かれたとの記事。カナダの先住民族ハイダアイヌ民族が交流した。ハイダは訪れる観光客に、事前に文化や歴史について講習し、敬意を払う誓約を求めている。
 道新夕刊カルチャー面では、俳人の堀本裕樹をクローズアップ。和歌山出身ながら、歌人の山田航月岡道晴とともに普及イベントを続けてきた。滝川、札幌でイベントを計画中。

2023-09-14

 道新に、ススキノのラフィラ跡地の商業ビル内にTOHOシネマズのシネコン「TOHOシネマズすすきの」が11月30日開業の記事。ススキノの映画館はいつ以来だろう。
 道新札幌市内版に、札幌市の絵本基金「子ども未来文庫」が活動15周年を迎えた記事。市民からの絵本の寄付を、保育所の読み聞かせなどに使ってもらう取り組み。年間400〜1200冊が寄贈され、累計1万冊異常が集まっている。

2023-09-13

 テレビニュースにもなっていたが、イタリアを拠点に活動しているオペラ指揮者の吉田裕史(北見市常呂町出身)が、ウクライナ国立オデッサ歌劇場の首席客演指揮者として歌劇『ラ・ボエーム』を指揮した。現地時間の10日午後6時。ロシアの侵攻後に日本人が指揮するのは初めて。釧路出身・在住の写真家・長倉洋海の軌跡を振り返るドキュメンタリー映画『鉛筆と銃 長倉洋海の眸(め)』が、12日に東京都写真美術館で公開された。長倉自身が代表を務める「アフガニスタン山の学校支援の会」などが制作。監督は河邑厚徳。約200点の写真を自身が語る。11月にはシアターキノでも上映予定。いずれも道新朝刊社会面の記事から。
 同じく札幌版には、目新しい記事。タイの映画『ワンデイ』のインド版のロケが、来年1〜3月に道内で行われる。インド版の主演・プロデューサーのジュネイド・カーンが、秋元克弘市長を表敬訪問した。タイ版は2016年に公開。インド版は札幌、小樽、旭川などで撮影予定という。体験型観光の国際イベント「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)」の開会式が11日に白石区の札幌コンベンションセンターで行われ、札幌書道展会員で札幌南高書道部顧問の水間臥猪(がちょ)が、書道パフォーマンスを披露した。釧路出身の箏奏者・橋本みぎわが共演。橋本は漫画『この音とまれ!」の作者アミューの姉だそう。
 道新夕刊カルチャー面には、hitaruで10月7、8日に開かれる歌劇『ドン・カルロ』にエリザベッタ役で出演する木村美穂子のインタビュー。グランドオペラジャパン、東京二期会との共催、ドイツ・シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演で、札幌、よこすか芸術劇場、東京文化会館でも上演する。木村はhitaru柿落としの『アイーダ』にタイトルロール(ダブルキャスト)で出演している。
 朝日新聞文化面の文化財修復の記事が興味深い。文化庁が、文化財修理のための原材料のリスト化を進めているという話。2022年度から5年計画の「文化財の匠プロジェクト」の一環。国宝の掛け軸の修理に不可欠な「宇陀紙(うだがみ)」は、奈良県の宇陀紙選定技術保持者によると、戦後に先代が道北のノリウツギを使い始めたが、エゾシカの食害や作業者の高齢化で生産が危ぶまれていた。危機を聞いて道立林業試験場の職員の協力で、標津町に自生地が見つかった。文化庁の補助で、町が森林組合を巻き込んで生産を開始した。文化庁は、お墨付きを与える(リストから漏れた産地へのマイナス要員にも)ことを懸念しているというが。

2023-09-12

 地域固有のアイヌ文化を残すため、道内各地のアイヌ協会がさまざまな取り組みをしている。道新朝刊社会面の記事。弟子屈で開かれた「パリモモ(ウグイ)祭り」も屈斜路地域の固有の儀礼だという。道教大札幌校の百瀬響教授は、サハリン州に伝わる儀礼に使うイクニシ(捧酒箸)などを3Dプリンタで制作した。無形文化の将来を案じ、取り組みを進めているということ。
 漫画『コブラ』で知られる旭川出身の寺沢武一が死去。集英社の発表で年齢も不明。北海道とは縁がないが、作曲家の西村朗も死去。69歳。
 朝日新聞朝刊道内面。詩人三角みづ紀の《晴れても雨でもサニー》。夫と釧路を訪れて、湿原列車でつかの間の休息。特に事件があるわけでもなく、車内でのよしなしごとを語っているだけだが、そこはかとなく温かい。ゆったりと走る列車と、意外にせわしない「観光」の時間。
 道新夕刊のカルチャー面では、札幌在住の堀きよ美が主催する「五月の会」による演劇「江戸吉原遊廓 扇屋〜花魁 白扇」の告知記事。23、24日にコンカリーニョ。脚本家の渋谷健一が堀のために書き下ろした時代もの。

2023-09-11

 道新夕刊社会面には、知里幸恵(1903〜22)の生涯を描いた映画『カムイのうた』完成記念試写会が、東川と旭川で10日に開かれたとの記事。11月23日から旭川などで上映される。

2023-09-10

 道新朝刊3面の《アングル》。広尾町海洋博物館が、4月の改正博物館施行で登録抹消の危機との報。学芸員が配置されておらず、冬期閉館のため開館日数が100日強と規定の150日に足りないことが、博物館法の運用厳格化に伴い問題視されるという。登録が抹消される可能性も示唆しているものの、猶予期間は5年ある。全国に910館ある登録施設のうち、3割が学芸員不在という調査もあって、それらが一斉に登録抹消になることは考えにくい。ここは「危機」というより「困惑」の状況だろう。
 朝刊「読書ナビ」の「ほっかいどう」は、国立アイヌ民族博物館編『ウアイヌコ コタン アカ ウポポイのことばと歴史』。2020年に開館した博物館の展示コンセプトを概観しながら、開館前後に奮闘してきたスタッフが自らの考えをつづった記録集のようだ。この施設を評価すべき未来に必要な書。           

2023-09-09

 さっぽろ芸術文化の館(芸文館、旧北海道厚生年金会館、旧ニトリ文化ホール)の跡地について、札幌市が、再開発を担当する民間事業者をしているという記事が、道新朝刊札幌版に。敷地は11,600㎡。市が行った市場調査では、5つの団体から▷多目的ホール▷アリーナ▷商業施設▷医療施設▷シェアオフィス▷スタジオ▷広場の整備などのアイディアが寄せられた。市は条件をつけて事業者を募る(公募プロポーザル)という。建物は民間が整備し、土地は市が年間1億9,900万円で貸す。
 たくさんの疑問符が浮かぶ。札幌市のHPのから抜粋して紹介する。

土地利用に係る基本的な考え方

・事業対象地周辺に立地する機能を活かした集客交流機能の向上
・都心西側の回遊拠点を形成し、美しいみどりや歴史・文化芸術を活かした多様な交流をはぐくむ
・地域特性を活かした新たな交流と活動の創出

提案を求める事項

1.様々な市民等の利用と交流に寄与する施設(集客交流機能)
例:多目的ホール、劇場、イベントスペース、ギャラリーなど
2.主に地域住民の利用を想定した施設(地域活動促進機能)
例:地域住民や子育て世代等の集まり、会議、発表会等で活用できる施設など
3.屋内外の公開空地
4.質の高い都市景観の形成
5.ゼロカーボンシティの実現に向けた取組
例:CGS、下水熱利用、BEMS、オンサイトでの再エネ導入、ZEB化、EVの充電設備の設置など

北1条西12丁目の土地利用について

 提案を求める事項のうち、1と2がポイントだろう。市は1の例に挙げた施設例について、市民のニーズを把握しているのだろうか。必要とされるものの優先順位は検討したのだろうか。1と2の両方を満たすとなれば、いわゆる複合的な施設にならざるを得ない。2は公民館の機能ということだろうか。あの一等地に? 記事では札幌市資料館についてしか触れていないが、近くには札幌市教育文化会館もあり、それらとの整合性をどう考えているのだろう。都心まちづくり推進室のコメントとして「多くの市民らを集客して多様な交流を促すとともに、都心西側の回遊性を高めたい」とあるのだが、要するに「民間事業者さん、よく考えて提案してね」ということ? そして、この話題、地域版でいいのかしら。
 同じ札幌版で、札幌国際芸術祭実行委が、私立藻岩南小学校でプログラミングの体験プログラムを行ったという話題。冬の芸術祭との関連で、雪の結晶について学習した上で結晶の形をパソコン上に作ってみたとのこと。芸術祭への関心を高めるひとつのアイディア。中谷宇吉郎については説明があったのだろうか。
 朝刊社会面には、アイヌ文化の認証制度と監修事業に取り組む「阿寒アイヌコンサルン」が、雑貨の国際見本市「第96回東京インターナショナルギフト・ショー」に初出展したという話題。
 夕刊1面の《土曜ズーム》は、ヤフーの支援を受けてドキュメンタリー映像を撮る恵庭の作家を紹介している。プロデューサーと意見交換しながら作品を作り、資金援助も受けられる。作品はYahoo!で公開される。ヤフー側は「その後の映画化やテレビ番組化など作家のステップアップにつながれば」。
 夕刊カルチャー面は話題豊富。旭川の村田和子が寄稿。網走生まれの児童文学者の作品集『岩田道夫の世界』(ぷねうま舎、未知谷発売)刊行に携わった。『雲の教室』シリーズ、消しゴムアート版『古事記』、銀河鉄道を彷彿させる絵画など。ウクライナの「キーウ・クラシック・バレエ」公演の予告が詳しい。出演するキーウ・バレエのプリンシパル長澤美絵とソリストの北口雅人によれば、首都キーウでは空襲におびえながらも限られた演目で公演が復活しているという。演目は『白鳥の湖』など。ロシア生まれながら、ウクライナにルーツを持つ作曲家の最も著名な作品を取り上げるのは意義深い。
 SCARTSで開かれているアニメーション作家横須賀令子の個展「波と風のもののけたち」も取り上げた。和紙を使い、墨で手描きした作品もあるそう。11日まで。《音楽会》は、札響の名曲プログラムを取り上げた。元首席指揮者のポンマーがブランデンブルグ協奏曲第3番、ベートーヴェンの交響曲第8番、ブラームスの交響曲第4番という「ドイツ三大B」のプログラム。ブラームスの冒頭の主題について〈このパッセージをポンマーは理性と感情の絶妙なバランスをもって描いてみせた。まるで秋の空にわたる清涼な風のようだ〉(評・中村隆夫)

2023-09-08

 朝日新聞朝刊文化面の関東大震災100年の記事は、災害時のラジオの役割について。冒頭にHBCラジオのパーソナリティ山根あゆみの胆振東部地震のエピソードを伝えている。リスナーから大量の情報が届き、根拠の乏しい不確かな情報、具体的には「札幌が断水する」の扱いに困ったこと。即時に伝えられるのはネットやラジオの強みでもあり、リスクでもある。
 朝日新聞夕刊1面の「筑摩書房ほぼすべてある図書館」の話題が面白い。長野県の塩尻市立図書館。創業者の古田晁(あきら、1906〜73)が塩尻市の出身で、その旧名は「筑摩地村」であったのが社名の由来だったと。生前に、すべての刊行物を寄贈していただけでなく、親族にもすべて献本していたそう。1994年度以降は、筑摩書房が全刊行物を献本している。ヒトが結ぶ縁に心が温まる。
2023-09-07

 松本の「セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)」で指揮したジョン・ウィリアムズについて、朝日新聞夕刊で吉田純子編集委員が書いている。〈疑心暗鬼に覆われた時代において、生涯の友情を音楽によって確かめる、真に人間的な現場に立ち会えたことを忘れまい〉

2023-09-06

 道新夕刊カルチャー面の《展覧会》は、SCARTSで開かれている「㐂久一本店」の創業100年展を取り上げた。〈一族に共通する芸術への活力〉のヒントが家族内同人誌『しんるい』の存在であるという指摘は然り。発表する作品をもってつながることの楽しさは、芸術へのモチベーションとなる。それを体現した展覧会であった。

2023-09-05

 道新夕刊1面に、中谷宇吉郎(1900〜1962)が北大で雪の結晶製作に成功した研究室の資料が、重要科学技術史資料(未来技術遺産)に選ばれたとの記事。雪氷工学の原点との位置づけ。国立科学博物館が選定した。遅すぎる顕彰とはいえ。
 道新夕刊カルチャー面の《ウエーブ音楽》(山田治生)は、ヴィオラ奏者の今井信子の傘寿記念演奏会を紹介している。「世界のイマイ」ではあるが、2004年から16年まで小樽を訪れて毎年開催したマスタークラスの修了生によるアンサンブル「小樽ヴィオラマスタークラスAlimni」が、演奏会の柱になっている。〈〝卒業生〟の中には日本のオーケストラで首席を務める者や海外の楽団で活躍する者も多数いる〉。ヴィオラマスタークラスを継続したことの意義が、しっかりとした成果として表れていることに、喜びを禁じ得ない。

2023-09-04

 道新朝刊の道央圏版に「ROOTS AND ARTS 白老文化芸術共創」始まるの記事。町内12ヶ所で、アーティスト5組と6つの企画展を開催中(10月6日まで)。梅田哲也などが参加。赤平市エルム高原リゾートでは23、24日に野外音楽ライブ「AKABIRA CAMP BREAK2020」を開催予定。真心ブラザーズ、フジファブリック、チャラン・ポ・ランタン、sumikaなど出演。
 道新朝刊社会面。北大COIネクストが、多様性などをテーマとする中高生・高専生向けの短編小説を募集している。100〜5,000字と幅広い。

2023-09-03

2023-09-02

 道新朝刊の社会面には、岩見沢の「開拓の祖」と言われる辻村直四郎(1869〜1941)の日記に、関東大震災の被災地見聞が見つかったとの記事。親戚が住む神奈川県を訪ねて記述したという。記述そのものは詳報されていないが、記憶にとどめておくべきだろう。

2023-09-01

 北海道新聞が9月末で夕刊の発行を終える。一部メディアで報じられていたが、この日の朝夕刊で読者に初めて伝えた。〈新聞用紙をはじめとする原材料費の高騰や輸送コストの上昇などから、これまで通り夕刊を発行し続けることが難しくなりました。読者の皆さまのライフスタイルの変化、デジタル社会の進展などを踏まえ、紙面のお届けは朝刊のみにさせていただきます〉。時が来た、ということ。
 道新朝刊の《各自各論》。北大公共政策大学院の山崎幹根教授が「北海道は『希望の国』か」の題でに寄稿し、村上龍の『希望の国のエクソダス』(2000)を引用している。『希望の国―』は、集団不登校を起こした数十万人の中学生が13市町村が合併してできた道央圏の野幌(ノホロ)市に脱出(エクソダス)するお話。〈北海道からのエクソダスではなく、北海道へのエクソダスを現実のものとするためには、北海道に「希望」があるかどうか、そして、その実現を誰が担うのかが問われている〉と結ぶ。考えてみれば、明治の開拓もまた、本州以南のそれぞれの「地元」からの脱出であったのかもしれない。現実を直視してなお「希望」であったのかどうかは、その人によるのかもしれないが。
 道新夕刊のカルチャー面では、北海道博物館で開催中の「北の縄文世界と国宝展」の関連で、任期ユーチューバー「週末縄文人」による展覧会取材の様子を紹介している。マニアックな縄文ファンとのコラボレーションで展覧会を盛り上げようという苦心賛嘆。
 同じ紙面の《まんが最前線》では、松本いっか『日本三國』を紹介した(雑賀喜由)。北日本は【聖夷】、東日本は【武凰】、西日本は【大和】と、三つにわかれて覇権を競っているとの設定。日本という国は、北と南で気候も住む人たちの気性も大きく異なる。『希望の国―』と同様に、いくつかの異なる勢力が割拠していてもおかしくない島であることを思い起こさせる。信長、秀吉以来の「天下統一」という常識を、疑ってみるのもいいかもしれない。
 朝日新聞朝刊の文化面《災後のことば 100年前の文学・言語から(上)》。菊池寛は関東大震災当時に〈「震災に依って文芸などは贅沢品だという事を痛切に感じました」〉と新聞に寄稿した。この「芸術無力論」に対し、芥川龍之介は〈芸術は生活の過剰だそうである。(略)しかし人間を人間たらしめるものは常に生活の過剰である。僕等は人間たる尊厳の為に生活の過剰を作らねばならぬ〉と批判する。かみ合わない議論ではあるが、阪神・神戸や東北の大震災にあっても、歌舞音曲を「不謹慎」とするか「生を潤すもの」とするかは論じられた。おそらくはこれからも。朝日は別の特集紙面でも、関東大震災に直面した作家や経済人の動静や発言をまとめて記録している。芥川、室生犀星、与謝野晶子、犬丸徹三。

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