• 山本竜也『地方史のつむぎ方』

     札幌気象台職員の山本竜也が『地方史のつむぎ方』(尚学社)を刊行した。自らの調査の手法を詳しく説明するだけでなく、地方史の調査・研究に携わる24人にインタビューし、その動機や調査の課程を語ってもらっている。地方史と銘打ちながら、インタビューした相手の分野は多種多様で、通常なら「○○史」「○○文化史」と、その分野の関係者を中心に共有されていくはずの仕事だ。これを「地方史」でひとくくりにして提示し、歴史に向き合う人のアプローチに目を向けたことが、この本のポイントではないか。歴史を調べる、あるいは調べようとする人に必要な技術と心構えの両方を学べる一冊である。道新札幌圏版。
     同じ紙面。北海道地域文化選奨に、札幌のどさんこ青少年オーケストラ協会が選ばれた。元中学教師の助乗慎一代表が2013年に設立し、10人で運営している。江別、岩見沢、名寄、旭川、音更にジュニアオーケストラを設立して活動している。
    特別賞は千歳市民文芸の会。
     道新カルチャー面は、大正期の女性解放運動家伊藤野枝をモデルとする村山由佳の小説をもとにした映画『風よ あらしよ』の柳川強監督。
     社会面には、河﨑秋子が受賞した直木賞と芥川賞の贈呈式の話題。〈これからも生き物の命を書いていきたいという志だけは死ぬまで変わらないと思います〉。日本芸術院賞に、筒井康隆や、霧の彫刻で知られる中谷芙二子(札幌出身)が決まったとの記事も。

  • 93歳バリトン歌手

     道新カルチャー面は、旭川生まれの93歳のバリトン歌手川村英司が12月に札幌で演奏会「音楽に寄せて」を開いた。日本の童謡、ドイツ歌曲などを披露。安田菜津紀の《社会時評》、藤田睦美の《居酒屋小太郎物語》、天辰保文の《音楽アラカルト》第1154回。《音楽会》はマリンバの工藤瑠璃、上野岳のリサイタル。
     道新札幌圏版。青森市在住の美術家恒永さくらが、北海道文化財団アートスペースで刺繍作品の個展を開いている。タイトルは「The Warp and woof of a whale of a tale ―経緯、その鯨ほどの余白」。

  • ていね山映画祭が原案募集

     手稲区が「ていね山映画祭」で上映する短編映画の作品原案の募集を始めた。今回が2回目で、グランプリは10月の映画祭で上映する。テーマ自由で30分程度。5月27日締め切り。脚本や漫画、小説などの形式で応募できる。手稲区や手稲山が象徴的に東條することが条件。昨年製作した『7月の約束』(佐藤智也監督)が、今年2月にインド・チェンナイの映画祭で最優秀国際短編映画賞を受賞した。道新札幌版。
     同じく札幌圏版には、手稲区の絵本専門店「ちいさなえほんや ひだまり」が開店30周年を4月に迎えるとの記事も。月刊で5000部発行している絵本通信「ひだまり」は2月で400号に達したという。同じ紙面には、ベーシストの今沢カゲロウ(江別市出身)が、セミの幼虫を素揚げした昆虫食「セミゴンゴ」を開発したとの記事も。道銀芸術文化奨励賞を受けた日本画家水野剛志(ひさし)の個展が、道銀らいらっく・ぎゃらりぃで開催されている。

  • 『治安維持法の歴史』

     道新カルチャー面。『治安維持法の歴史』全6巻(六花出版)を編纂した小樽商科大の荻野富士夫名誉教授の寄稿。〈植民地や「満州国」での運用を抜きに治安維持法の本質は語れない〉。《武田砂鉄の考えるピント》は「「句読点怖がる」言説に思う」。「若者の価値観」とひとくくりにする風潮を問う。北海道立文学館の特別展「100年の時を超える」紹介、《道内文学》短歌(評・桑原憂太郎)も。

  • letter16 データベース試運転。

     2月も20日となり、年度末で忙しい日々を迎えている方も多いかと思います。
     ACAは、活動の根幹となるデータベースのプロトタイプができており、運営メンバーで情報入力のテスト、いわば試運転を行っています。
     正式公開できるのは年度が開けてから。まだまだクリアしなければならない課題がたくさんあります。
     それまではトップページに据えた《AtoCジャーナル》をご覧いただきますよう。2月9日に小澤征爾の死去が報じられ、購読している道新と朝日新聞でも追悼記事がかなりの数、掲載されました。巨匠(マエストロ)という言葉が安易に使われるようになりましたが、新聞が見出しに「世界の」を取って違和感のない文字通りのマエストロは、この後当分出てこないようにも思います。

  • 東大闘争のアーカイヴ

     道外の話題。昨年、1960年代の東大闘争のビラなど資料約6 ,500点が東大文書館に納められた。当時の東大生らが集めたもの。国立国会図書館にも元東大全共闘代表が5,400点を28巻に製本したものを寄贈した。貴重なアーカイヴだが、独特の用語が使われるなどわかりにくいので、オーラルヒストリーや手記と併せると研究しやすくなると研究者。

  • サクラの行方

     しばらく投稿がままならなかったが再開。
     道新社会面。七飯町のサクラ研究家・浅利政利が35年前にポーランドに送った「紅豊」やチシマザクラ、ミヤマザクラの行方を探し当てた英国のジャーナリスト阿部菜穂子が、アウシュビッツ強制収容所で亡くなった神父の話を交えて著書『The Martyr and Red Kimono(殉教者と赤い着物)』として刊行する。
     道新読書ナビに、佐川光晴『あけくれの少女』(集英社)の書評。広島県尾道市から、東京、高崎、太平洋上、浜松を転々としながら、諦めずに自分の道を探し続ける真記の生涯を追う。評は前野久美子。《訪問》は『アイヌもやもや』(303BOOKS)を書いた北原モッコトゥナ北大教授。

  • 「人権」掲げる歌集

     サタデーどうしん文化・エンタメは、新歌集『ヒューマン・ライツ』(左右社)を出した北山あさひのインタビュー。2021年道新短歌賞受賞者。タイトルの意味は「人権」。《ステージ》は倉本聰『ニングル』のオペラ版東京公演。山田航の《札幌零景》は、ニセ時計台の話題。

  • 映画『ゴールデンカムイ』

     道新カルチャー面は、公開中の映画『ゴールデンカムイ』の久保茂昭監督インタビュー。「明治時代や北海道をリアルに描けるかどうかが肝になる」と考え、撮影準備には一般的な邦画の2、3倍の時間をかけたという。北海道二期会が11月23、24日に札幌市教育文化会館で開くオペレッタ『こうもり』の制作発表を1月に行った。1964年設立で、今年が創立60周年。ドイツ語歌唱、せりふは日本語。川瀬賢太郎指揮の札響。《金曜シネマ》は『カラーパープル』。
     道新社会面は、第14回ロケーションジャパン大賞の部門賞に、札幌でロケを行ったネットフリックスのドラマ『First Love 初恋』が選ばれた。池澤夏樹の新著『天はあおあお 野はひろびろ』(北海道新聞社)が17日に刊行される。札幌10区新聞では、道立三岸好太郎美術館の企画展『恋する画家の陶酔ざんまい』を紹介。ヴァイオリンのハーモニクス奏法の原理を数式で解明した、札幌開成中等教育学校の田中翔大の記事も。国際学生科学技術フェア(ISEF)で米音響学会賞1等賞などを受賞した。

  • 現実と空想を混ぜて物語と為す――河﨑秋子

     道新カルチャー面は、河﨑秋子の寄稿「直木賞を受賞して」、桜木紫乃の連載《居酒屋さくらぎ》が並ぶ。受賞作を語る河﨑の言葉〈現実と空想を混ぜて物語と為す。それこそ最も人の心に届きやすい道だと私は思い定めて小説を書いてきた〉。道新の小澤征爾追悼は、長年その仕事を見つめてきた音楽評論家の東条碩夫の一文。〈病に襲われた晩年も、音楽への情熱、闊達な精神は失われなかった。射るような眼でオーケストラを鼓舞した小澤さんの指揮姿はもう見られない。私たちはかけがえのない指揮者を失った〉。《音楽会》はLCアルモーニカがhitaruで上演したジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』(評・八木幸三)。鳥取市で開設準備が進む伊福部昭記念資料館(仮称)の話題も。

  • 手厚い朝日の小澤追悼

     朝日新聞の小澤征爾追悼は、かくも手厚い。朝刊には編集委員の吉田純子が「泣き虫マエストロ」を。夕刊では読売交響楽団の首席客演指揮者を務める山田和樹のエピソード。9日夜の山田=読響のプログラム後半は、武満徹『ノヴェンバー・ステップス』とベートーヴェン第2交響曲だった。くしくも1967年に小澤の手でニューヨークで初演された演奏会と同じ組み合わせ。山田は、午後7時に伝えられた訃報は演奏会に臨む音楽家に憂いがないようにとの配慮ではないかと考え、黙禱や拍手を慎むことを観客に求めず、通常通りに演奏したという。
     道新は優れたバレエ指導者・久富淑子の《哀惜》。札幌生まれ、滝川育ち。熊川哲也をはじめ、各国のバレエ団でプリンシパルなどとして活躍する後進を育てた。

  • 現代アートシーンを振り返る

     この日はSCARTSで、SIAF2024連携プロジェクトのひとつ「Sapporo Parallel Museum 2024」関連のトーク「1990~2020年の札幌現代アートシーンをふりかえる 創造都市編」 が開かれた。SIAFディレクターの小川秀明をはじめ、酒井秀治、高橋喜代史、端聡、浜部公孝、細川麻沙美、吉崎元章、今村育子の面々。最初はそれぞれの立場でプレゼンテーション。浜部が札幌の「創造都市宣言」とは何なのかを解説したあと、吉崎が1990〜2020年の北海道美術を振り返る総論を、端が2014年の第1回開催に至る経緯を、小川が今回のSIAFについて、細川はこれまでと今回のSIAFの比較を交えて、今村はパラレルミュージアムについて。後半の座談で興味深かったのは、最後に高橋が芸術祭への地元作家の起用について尋ね、SIAF側が「地元作家を多数起用することが本当に必要だろうか。SIAFに触発された別の展覧会という形もあり得るのでは」と問いかけたこと。2014年のSIAFではこの点が焦点となり「永遠の課題」という受け止めになったが、今回はこの問いかけに異論はなく、一応の決着を見た格好。
     朝日新聞は引き続き小澤征爾追悼。村上春樹の追悼文に1頁を割いた。多くのエピソードで小澤の人となりを紹介。オーケストラへの向き合い方として〈征爾さんはあまり感情を面に出すことなく、ゆっくりと、ひとつひとつ丁寧に細部のネジを締めていく人だった。オーケストラの出す音に注意深く耳を傾け、問題があればそれを指摘し、どこがいけないかをユーモアを交えてフレンドリーに説明し、その部分を締める。それを何度も何度も繰り返して、彼の求める音を、音楽を、辛抱強くこしらえていく〉〈征爾さんの場合は、ネジをぎゅっと締めることによってその結果、驚くほどすんなりと演奏から肩の力が抜けていきのだ〉〈そこには過度なメッセージ性もないし、大げさな身振りもないし、芸術的耽溺もなく、感情的な強制もない。そこにあるのは、小澤征爾という個人の中に確率された純粋な音楽思念の、拒食を排した誠実な発露でしかない〉。貴重な観察であろう。
     同じ日の文化面では、桐朋学園の後輩である秋山和慶が、音楽面から小澤征爾を語った。〈小澤さんの音楽の特徴を一言でいえば、やはりあのリズム感、そして瞬発力です。どこをちょっと緩めようとか、ぐっと持ち上げようとか、そうしたペース配分がすごく上手だった〉も、村上の言葉と通じる。恩師斎藤秀雄が臨終の場面に言った「ごめんな」「君らをよく怒ったのは僕が未熟だったから」との言葉が、小澤の音楽や人間への愛の根源であったのではないかと結ぶ。
     ボストン交響楽団が9日、バッハの『G線上のアリア』で小澤征爾を追悼した。道新社会面。
     道新の読書ナビ《ほっかいどう》。藤尾均『歌が誘う北海道の旅』(新評論)は、ご当地ソング78曲を紹介する。著者は医学史、医学倫理などが専門の旭川医大名誉教授。《北海道の新刊》は朝倉かすみ『賑やかな落日』(光文社文庫)、高澤秀次『評伝 立花隆』(作品社)、横山北斗『洞爺丸追憶』(津軽書房)。
    「島をまるごと楽器化する」というコンセプトで、東大大学院准教授とSIAFラボが江差町鴎島の奇岩「瓶子岩」で試みた実験。50年前に実験音楽家デビッド・チュードアがスウェーデンの孤島クナーヴェルシェアで構想した未完の「コンサート」を模したという。超音波を使ったパラメトリックスピーカーで、鳥のさえずりを島や岩にぶつけるように流す。2月17、18日に北大工学研究院のVRシアターで上映する。朝日新聞北海道面。

  • 小澤征爾を悼む

     小澤征爾の訃報を、各紙一斉に掲載。
     道新の一面トップは、イトーヨーカドーの道内撤退報道。2番手は「札幌駅再開発ビル2年延期も」。これに次いで「小澤征爾さん死去 88歳 世界的指揮者」。第1社会面トップに「巨匠オザワ 世界魅了」と評伝「温かい「音楽する心」」。札響と小澤の共演については「1974年9月の定期演奏会(札幌市民会館)を皮切りに、81年まで9回共演している」。関連で元札響首席チェリストの土田英順のコメントを掲載した。各界からの悼む声も。
     朝日新聞は一面の2番手。見出しは道新と同じ。社会面は「音楽の光で世界照らす/地方から発信 情熱注ぐ/飾らない人柄 引きつけた」。吉田純子編集委員の評伝「愛すべき無鉄砲 壁つくらぬ「目力」」はさすがに読ませる。〈対話の権化であるオペラの精神を、言葉や文化の壁のない楽器だけで実現する。そんな理想郷を小澤さんは生涯目指し、音楽の伝統を継ぐ「職人」のひとりとして国境を越え、お欧州の伝統の系譜に連なった〉。他に「卓上四季」でも小澤に触れた。
     読売新聞も一面2番手。毎日新聞は一面トップ。見出しはいずれも同じ。読売は社会面「オザワ 日本の誇り/最高峰の舞台で指揮」「人間味あふれる素顔(評伝)」のほか、エンタメ面に「小澤語録」も掲載した。毎日の社会面は「世界が愛した「オザワ」」/「音楽で心一つに」貫く」「「リズムの爆発」聴衆酔わす(評伝)」と梅津時比古執筆の記事を掲載。難病の子との交流や秋山和慶、松本市長のコメントもある。

     道新カルチャー面は、小樽出身の漫画家山下和美らが、明治期、東京・世田谷区豪徳寺に尾崎三良男爵が建てた洋館を活用した「旧尾崎テオドラ邸」を3月1日にオープンさせるとの記事。「一般社団法人旧尾崎邸保存プロジェクト」を2022年に設立し、私財を投じて土地・建物を買い取った。ギャラリーとして活用し、上砂川町出身の山岸凉子、札幌出身の大和和紀らのチャリティー作品展、札幌出身の三原順の回顧展などを予定している。同じ紙面には、ウクライナ国立オデッサ歌劇場の首席客演指揮者を務める北見市常呂町出身の吉田裕史が、日本公演のためのクラウドファンディングに取り組んでいるとの記事も。

  • 小澤征爾、死去

     小澤征爾が2月6日に死去した。88歳。デジタル版の速報見出しは道新が「世界的指揮者の小澤征爾さん死去/88歳、文化勲章受章者」、朝日は「指揮者の小澤征爾さん死去、88歳/戦後日本のクラシック界を牽引」。読売は「小沢征爾さん死去、88歳/ボストン交響楽団などで日本人初の音楽監督」。毎日は「小澤征爾さん死去、88歳 世界的指揮者、日本クラシック界けん引」。日経が「小澤征爾さんが死去、88歳 指揮者「世界のオザワ」」。明日朝刊の紙面が気になる。
     小澤の才能の最たるものは「人たらし」だったのではないか。人間力と言ってもいい。とにかく人に好かれる。聴衆はもちろん、共演する演奏家、支援者、後半生をささげたとも言えるフェスティバルの地である松本の人々にも。38歳だった1973年からボストン交響楽団の音楽監督を29年間務めたことが、何よりの証左だ。同じ楽団のシェフをこれだけの期間、一人の指揮者が務めることは「空前」はいざ知らず「絶後」であることは間違いない。
     そしてあの目。人なつこいふだんとは違って、指揮台から演奏者を睥睨する目力。壮年期の指揮ぶりを映像で観て、楽団員ひとりひとりに向ける視線の強さは印象的だった。しかしカラヤンのように強大な力で威圧するのではなく、「一緒にいい音楽をやろうよ」と肩を組み、体を預けてくるような音楽仲間への向き合い方。どちらかと言えばバーンスタイン型か。2010年に判明した食道がんで闘病し、2017年に松本フェスティバルを取材した際は、内田光子との共演でベートーヴェンの第3協奏曲を椅子に腰掛けて指揮した。それでも要所要所で立ち上がり、音楽を駆動させようとする意志が伝わってきた。取材の一環で話を聞いた札響コンマスの田島高宏(サイトウキネンで何度も共演)は、体力的に衰えが感じられても、かえって「オーケストラ側が小澤さんを支えようという強い気持ちを持つように」なったと話していた。それもまた人間力あっての関係だ。
     渡米する前、N響とは不幸な事件があり、原因の一端を小澤自身の慢心と見る向きもあった。楽団員との軋轢は、個性派ぞろいの指揮者にはありがちのこと。かつて何度か小澤を札響に招いた(小澤=札響の《幻想》に名演あり。FM東京にいた東条碩夫が録音を担当した)事務局長の谷口静司は、自宅に小澤を泊めてさんざん酒を飲み交わしても、早朝にはスコアを眺めているような音楽への誠意があったとエピソードを語ってくれた。札響60年史執筆のため、定期会員から集めたアンケートでも、函館で小澤が指揮した札響演奏会があった日(1978年5月12日)、函館市民会館前の公園の芝生に寝転がってスコアを読む、白い服、ボサボサ頭の若い指揮者がいたという回答があった。常にポジティブで、より良い音楽を極めたいというパッションを絶やさない姿が、世界に愛される指揮者の偉大さだったのではないか。
     生の演奏を聴く機会はだいぶ前に失われていたが、私たちにはたくさんの音源をかみしめる機会が与えられている。あの笑顔と眼力を思い出しながら。
     道新カルチャー面。『夜明けのすべて』が公開中の三宅唱監督(札幌出身)インタビュー。他者から理解されにくい生きづらさを抱えた2人の物語。〈人生には理不尽なことがたくさんあって、その上でどう生きようとするか。自分も年齢を重ねて、そういったことを意識的に描けるようになってきた〉
     道新10区新聞では、北海道立近代美術館で開催中の特別展「AINU ART―モレウのうた」を大きく取り上げた。トークイベントの第1回で。木彫家・貝沢徹(平取町二風谷)、金工家・下倉洋之(阿寒湖温泉)に、五十嵐智美学芸部長が聞いた。同じ紙面では、3月末で閉館する道新ぎゃらりーで北海道イラストレーターズクラブアルファが開いている「道新ぎゃらりーサンキュー展」を紹介。ギャラリーは2003年に札幌時計台ビル地下にオープンし、2008年から本社へ移った。

  • カルーセル麻紀、森田たま

     道新カルチャー面。三島由紀子監督の映画『一月の声に歓びを刻め』に出演したカルーセル麻紀のインタビュー。「死ぬ前最後の仕事と思って引き受けた」と話す。同じ紙面には、道産子初の女性作家とされる森田たま(1894〜1970)の自伝的小説『石狩少女(おとめ)』がちくま文庫で復刊された。《奏で人札響》はフルート副首席の川口晃。
     道内では3月いっぱいで休刊になる朝日夕刊で、札響の東京公演評(評者・白石美雪)。指揮は常任として最後の共演となったマティアス・バーメルト。メインのブルックナー第6交響曲は「金管を含めて大音量の威圧感ではなく、大きな懐を感じさせるフレージングに、ブルックナーらしい威厳を託した」。ブリテンの『セレナード』は、テノールのイアン・ポストリッジとホルンのアレッシオ・アレグリーニを讃え「彼らの妙技を生かすべく、そっと並走した札響の弦合奏もみごとの一語に尽きる」。最後は「本拠地を離れての東京公演は、かつてこの楽団を「聴く人を迎えにいく音楽大使にしたい」と望んだ彼ならではの、充実の大団円となった」と、札響60年史のインタビューを引用して結んだ。

  • 和辻哲郎文化賞に小坂洋右

     姫路市が主宰する和辻哲郎文化賞に、札幌在住、元道新論説委員の小坂洋右の『アイヌの時空を旅する』(藤原書店)が選ばれた。国立科学博物館では、収蔵品などによる企画展で、昨年1月に新鉱物と認められた「北海道石」が展示されている。いずれも道新社会面。

  • カナダの脱植民地化教育

     カナダに留学し、脱植民地化教育を進めてきたユーコン大で学んできたニセコ在住のフリーライター・研究者の葛西奈津子が北大で講演した。1996年まで120年も続いてきた政府の同化政策やジェノサイドなどの実情を報告し、先住民族と大学の連携を考えるファーストネーション・イニシアチブ(FNI)の取り組みも紹介した。大学教育の脱植民地化は「和解の行為を未来に続ける実践であり重要と思う」と述べた。道新カルチャー面。道内文学(俳句・五十嵐秀彦)。文芸時評(伊藤氏貴)。

  • 被災者の心を支える

     能登半島地震被災地の石川県七尾市で、清水町のアイヌ文化発信拠点「ハポネタイ」のUtaE(ウタエ)代表が、アイヌ民族の音楽や踊りを伝えて被災者の心を癒やす活動を続けている。長期化する避難生活を精神的に支える活動も貴重だ。道新社会面におそらく共同通信の記事。
     朝日新聞文化面に池澤夏樹の寄稿。『ハワイイ紀行』を書くために長く滞在したハワイ・マウイ島のラハイナで昨年、大きな山火事があった。その被災地を訪ねた。住民が集まって歩くことで弔意と復興の意思を表明する催しに参加し、かつてハワイ王国の首都だったこの街の人々の気概に感銘を受けたという。〈ホノルルの喧噪からここへ来るとほっとする。人はみんなゆっくりと動くし、風と波が日々の指針となっている。サーファーの悠然たる生きかたが周辺にも浸透している。ここはぼくにとって理想の休息の地だ、たとえラハイナが燃えようと。〉
     この日2月5日は、SCARTSで現代音楽の演奏会「音楽と空間の新機軸〜ライブエレクトロニクスの現在」が開かれた。充実した内容だったので、どこかに詳報を残したいと考えている。

  • アート資材のリサイクル

     SIAF2024では、展覧会などで使った資材をリサイクルするプロジェクト「リサイクルセンター『周活』」に取り組む。札幌のマルチメディアアーティスト岡碧幸(みゆき)が、ミュンヘンでリサイクルに取り組むグループ「トライブグット」のメンバーを招いて天神山アートスタジオで、3月末までの土曜に活動する。ウクライナの詩人オスタップ・スリヴィンスキーがロシアの侵攻から逃れた市民の証言を集めた『戦争語彙集』(昨年5月刊)を、ロバート・キャンベルが日本語に訳した(岩波書店)。「食べもの」「猫」「ゴミ」など77の単語を表題とする文章が掲載されている。《穂村弘の迷子手帳》は「云えない言葉」。道新カルチャー面。
     ピアニストの江戸京子が1月23日に死去、86歳。

  • 雪まつり会場の巨大オブジェ

     道新カルチャー面は、SIAF2024の雪まつり期間中の催し中心に紹介。雪まつり会場は、オーストラリアのスタジオ・エネス制作のバルーン状のオブジェ『Airship Orchestra』が展示される。《金曜シネマ》はビクトル・エリセ監督の『瞳をとじて』。朝日新聞夕刊にも同じ映画の記事。半世紀前の『ミツバチのささやき』にも子役で出演したアナ・トレントにインタビューしている。第14回道展U21の大賞は、札幌大谷高3年、竹内優希の油彩『雪華』に決まった。道新社会面。
     浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」が国と道に対し、サケ漁の集団的権利を求めるよう求めた訴訟が1日に結審した。判決は4月18日。
     2月3日は札幌・南区の旧真駒内緑小(札幌市立大学まこまないキャンパス)で、南区アートダイアローグvoi.1が開かれた。ここで展覧会を開催している八子直子、北川陽稔と南区アートプロジェクトの国松明日香実行委員長の鼎談と、聴衆との車座集会のような形。地域のアートにフォーカスした意欲的な試みであることは評価したいが、テーマ設定があいまいで、発言者がそれぞれの思惑で議論を拡散させてしまった感があり、残念。多くのアーティストが区内に住んでいるため「アートによる活性化」を掲げる南区(役所)の思惑に沿って「まちづくり」を考えたい人、それよりも展示のあり方と作品について語りたい・聞きたい人、作家のステートメント(声明)と作品理解の相関関係を深掘りしたい人、「南区」をアイヌ語をもじった「ミナミナク」と読ませるセンスを疑う人…。どれも重要な視点だからこそ、テーマを絞り込んで、ひとつひとつ発言を吟味して進めてほしかった。

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